お薬屋さんのコラム

感染症について

新型コロナの感染が成立する3つの要素って何?

前回はアルコール消毒がナゼ有効なのかをお話しました。
今回は感染症学的な3つの要素についてお話します。
 
感染症学では3つの要素が揃って初めて成立すると考えられています。
では3つの要素とは何なのでしょうか?
 
要素① 感染するウイルスや微生物の存在
要素② 感染される動物やヒトの存在
要素③ 感染していく経路
 
当たり前と言えば当たり前ですね。
この3つの要素が揃うとインフルエンザや新型コロナなどの感染症が成立するのです。
逆に言えば、3つの要素の内、どれか1つでも欠ければ感染しないとも言えるのです。
 
感染を遠ざけるための対応策を考えてみました。
要素①は、手洗いやウガイです。ウイルスなどを体に近づけないことが大事ですね。
要素②は、体を温めたり、体力をつけて抵抗力を上げることです。予防ワクチン接種も有効です。
要素③は、換気する、アルコールで消毒する。近くにいるウイルスなどを遠ざる、撃退してしまう、ということですね。
 
新聞やテレビなどでよく見かける「新しい生活様式」がそのまま当てはまりますね。
インフルエンザでも新型コロナでも、感染症という概念から考えると、全く同じ予防方法が有効なのです。
 
まだまだ収束の兆しが見えない状況ですが、出来ることを生活に取り入れて日々を送って頂ければと思います。

2021/01/21

感染症について

新型コロナにアルコール消毒はナゼ効くの?

前回は感染傾向を判断する指標についてお話しました。
今回は新型コロナに対するアルコール消毒についてお話します。
 
トゲトゲした新型コロナウイルスをテレビで見たことがあると思います。
 
ウイルスの遺伝子は、二重構造の脂肪で出来た膜で覆われています。
(脂質二重膜、エンベロープと呼ばれます)
その膜に突き刺さる形で尖ったタンパク質(スパイクタンパク質、カプソメアーと呼ばれます)が存在します。トゲトゲして見えるのは、このスパイクタンパク質なのです。
油で出来た丸いボールの中に糸状の遺伝子が1本入っていて、ボールにはトゲトゲがたくさん突き刺さっている。イメージできたでしょうか。
 
新型コロナは丸いボール=エンベロープを持つ構造をしています。
脂質で出来たエンベロープは、脂質を溶かす界面活性剤やアルコールなどで割れて壊れてしまいます。
ボールが割れて遺伝子がむき出しになった状態のウイルスは、感染力を失ってしいます。
ですので、消毒用アルコールは、エンベロープを持つウイルスに対して大変効果的なのです。
 
ちなみに、エンベロープを持たないウイルスもいます。ニュースなどで聞くのはノロウイルスです。消毒用アルコールは効きにくく、次亜塩素酸ナトリウムなどでの消毒が必要となります。
 
新型コロナウイルスの撃退には、イスやテーブルのアルコール消毒、手を洗った後のアルコール消毒は大変有効な方法なのです。
 
拡大を防ぐためには他にも何をすれば良いのでしょうか?
え?耳にタコができる程色々聞いているよ。
まぁまぁ・・・次回は感染症学的な予防方法を紹介します

2020/12/17

感染症について

新型コロナの拡がりって・・どうやって判断するの?

新型コロナウイルスの流行が続いていますね。
今回は感染が拡大するのか、収束するのかを判断する指標についてお話します。
 
判断する指標には再生産数が用いられます。・・・再生産数?聞いたことがないよ・・
免疫学で用いられる用語なので一般的に馴染みがないのも無理はありません。
 
再生産数はRtと表現されます。1人から何人に感染を拡げるかの指標で、1より大きいか、小さいかで判断します。
例えばRt=2は、1人が2人に、2人が4人にと、感染者数が増えて感染が拡大していく状態を意味します。
逆にRt=0.5は、2人から1人、1人から0.5人にと徐々に減少して収束へと向かう状態を意味します。
 
さて、新型コロナではどうだったでしょうか。
4月初めはRt=2.27、この後に緊急事態宣言と休校です。
ゴールデンウィーク明けはRt=0.5と下がり、一旦収束に向かいます。政府の対策は有効だったわけです。
6月中旬から学校が再開された7月初めはRt=1.86と再び上昇。
夏休み期間中のお盆はRt=0.81。
シルバーウィーク明けの10月初めはRt=1.17と再び上昇。
 
現在の数値は「東洋経済オンライン コロナ」で再生産数Rtが公開されています。岡山県の状況もわかりやすく紹介されています。

次回は新型コロナウイルスに対するアルコール消毒の有効性についてお話します。

2020/11/19

感染症について

PCR検査って何?

PCR検査・・・最近よく耳にしますね。コロナウイルスの感染判定に応用されてますね。
でもどんな検査なの?気になったので調べてみました。

PCR、ポリメラーゼ チェイン リアクションの頭文字の略です。
日本語だとポリメラーゼ連鎖反応。一体何のこと?
簡単に言うと3つのステップで遺伝子のDNAを短時間で大量にコピーする技術です。

PCRが開発されたのは1980年代後半。
それまでは大腸菌にDNA断片を組み込み、細胞分裂を利用して複製する時間を要する方法でした。
手技もシンプル、時間も大幅に短縮される方法、それがPCRなのです。

  ① DNAは2本のヒモが二重らせん状に絡み合った構造をしています。
      約100℃の熱を加えると二重らせんがほどけて2本のヒモになります。
  ②ポリメラーゼという酵素を用いて1本のヒモから1本のコピーを作ります。
      同時にもう1本のヒモのコピーも作れます。
  ③ 約70℃の熱を加えると、ほどけた元のヒモ同士が絡み合ってDNAに戻ります。
      コピーしたヒモ同士も絡み合ってコピーDNAとなります。

①~③を繰り返すと、1つのDNAが2つに、2つが4つ、4つが8つと倍々に増えます。どんどんコピーが作られるわけですね。

DNAが微量だと検出できないので、PCRを用いて検査が出来る状態まで増やして判定する、これがPCR検査なのです。

そしてコロナウイルスDNAの中にだけ存在する特有のアミノ酸の固まりを検出し、陽性陰性の判断に用いるのです。

 

2020/03/19

感染症について

風疹に対する自治体の取組み

前回は、風疹はお腹の赤ちゃんに多大な影響を及ぼす事、
予防接種を全く受けていない年代の男性が感染源となり流行を引き起こす可能性が懸念されている事、
厚生労働省は予防接種対策に乗り出したことをお話しました。

予防接種は1960~1980年代生まれの男性が対象となります。
まず免疫力を示す抗体の有無を調べ、抗体が無い人、抗体の量が少ない方に予防接種を行います。

平成31年度は、昭和47年~昭和54年生まれの方が対象となります。
まず市町村からクーポン券が郵送されます。検査実施可能な医療機関に持参すれば検査が受けられます。

2019年5月から案内が開始される予定だそうです。抗体検査は採血を行います。
通常なら費用負担が生じますが、今回の対策ではクーポン券で費用が助成され、原則無料となります。
また、検査結果により、予防接種が行われる場合もありますが、この費用も原則無料です。

昭和37年~昭和46年生まれの方は翌年度の実施となります。
来年まで待てないよ!という方は、市町村の保健所に連絡すればクーポン券を発行してくれます。

仕事で忙しいし・・面倒だし・・痛いのはゴメンだし・・気持ちは分ります。

でも、検査を受けて免疫をつけることは、自分を守るだけでなく、周りの人々、何よりこれから生まれてくる子供達を守ることにつながります。

五体満足で無事生まれて来ることは、親だけでなく周りの人の願いです。検査を受けることは愛の行動だと思います。

子供達が健やかに生まれてくるために検査を受けましょう!

2019/06/20

感染症について

風疹に対する國の取組み

風疹という病気をご存知でしょうか?
風疹ウイルスによる感染症です。
妊婦さんに大きな影響を与える事をご存知の方も多いと思います。

風疹の恐ろしさはお腹の中にいる赤ちゃんへの影響です。
免疫のない女性が妊娠中に感染して発症すると、免疫力がない赤ちゃんまで感染して先天性風疹症候群となります。
その結果、難聴、白内障、心疾患など、生まれながらに障害を抱えてしまうのです。
母体に免疫力があれば赤ちゃんへの感染は、ほぼ防ぐことが出来ます。

このため、1960年代から女子に集団予防接種を実施してきました。
1980年代からは男子にも拡大されました。

ここで問題なのは、1960~1980年代生まれの男性は全く接種を受けていないことです。
職場や仕事で妊娠する可能性がある女性と接する機会も多く、これから子供を授かる可能性も十分にある年代です。

風疹ウイルスは、インフルエンザより強い感染力があります。免疫力のないこの世代の男性は、感染源となって流行を引き起こす可能性があるということです。

そこで、厚生労働省は免疫力を示す抗体の有無を調べ、無い人には予防接種を行う対策に乗り出しました。2019年4月から開始されます。
抗体の有無を調べることは、自分を守るだけでなく、周りの人々、何よりこれから生まれてくる子供達を守ることにつながります。

調べてみようかな・・・でも一体どうすれば良いの?
検査は自治体が行います。次回は自治体からの案内や時期についてご紹介します。

2019/05/16

感染症について

インフルエンザワクチン2 予防効果編

前回はインフルエンザワクチンの選定についてでした。

ワクチン注射で体内に入ったインフルエンザウイルスに対し、ヒトはIgGという抗体を作り出します。抗体は“悪いヤツがいるぞ!オレがひっついて目印になるから早くやっつける部隊をよこしてくれぇ!”という働きをします。

抗体を作ることがワクチンの効果なのです。この抗体は血液に入ったウイルスに対しては有効です。

しかし、ノドの粘膜にとりついたウイルスに対しては効きません。なぜならノドでは、IgAという違うタイプの抗体が作られるからです。

それじゃ予防注射は意味ないじゃん!というツッコミを入れたくなりますが・・
ノドの粘膜で爆発的に増え、肺や体内に侵入したウイルスをやっつけることは出来ます。感染を防ぐのではなく、重症化を防ぐことに重点がおかれているのですね。度々聞く声や実感もあながち間違いではないのです。

そのため、抵抗力が弱い高齢の方、小さなお子さんに推奨されているワケですね。

 

2014/10/16

感染症について

インフルエンザワクチン1 選定と製造編

毎年インフルエンザワクチンの予防注射をされている方も多いと思います。
2014~15シーズンのワクチンには不活化させた3種類のウイルスが含まれています。

では、数多くあるウイルスタイプからどうやって3種類を選ぶのでしょうか。

選定するのはNIID,国立感染症研究所という国の研究機関です。
日本国内の流行状況、ウイルスの遺伝子解析、周辺各国からの解析結果、WHOの監視システム(そんなのがあるんですね!)を利用した世界中からの情報を基に候補ウイルスを選定し、安定性や適格性などのチェックを経た後に決定されます。

ワクチンはニワトリの卵を利用して造られます。シーズン前に間に合うよう5月頃から製造を始めます。
さて、ワクチンは効かない・・そんな声も度々聞きます。
免疫反応から考えたワクチンの効果について考えてみました。

次回に続きます。

 

2014/09/18

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