お薬屋さんのコラム

ワクチンについて

子宮頸がん 犯人はダレだ! ~その5~ ワクチンが救う命

子宮頸(けい)がんの原因となるヒト・パピローマ・ウイルス=HPV。
最後はワクチンが救う命についてです。

大阪大学の調査では、無料接種を受けることが可能であった2000年度~2004年度生まれの女性を対象に研究を行いました。
この調査によると、無料接種の機会を逃してしまった人数は260万人になります。

仮に、そのうちの7割(182万人)が接種を受けていたら、将来子宮頸がんになる人は2.2万人少なくなり、更に5500人が亡くなるのを避けられる、と試算しています。

この試算での対象期間は4年間です。この期間が長くなるほど数字は更に大きくなっていきます。

2000年以降、毎年1万人を超す女性が子宮頸がんに罹っています。
新たに罹る人数も、亡くなる方も毎年徐々に増え、減っていないのです。

子宮頸がんになる主な年齢層は20~40代です。子育てや家庭を支える年代です。
通院や入院は家庭に大きな影響を及ぼします。残念なことに子供を残し亡くなる方もおられます。

この状況をどうにかできないのでしょうか?

有効な対策は、定期的な子宮がん健診の受診と、ワクチン接種です。
岡山市の健診は2200円の負担で受診できます。
また、ワクチンは年齢が適合すれば無料での接種も可能です。

ワクチン接種については様々な考え方があります。接種はあくまでも自己判断です。

ただ、このコラムの内容は客観的で科学的な情報を基にしています。
このコラムが判断の一助になれば幸いです。

 

2022/08/18

ワクチンについて

子宮頸がん 犯人はダレだ! ~その4~ ワクチンの効果について

子宮頸(けい)がんの原因となるヒト・パピローマ・ウイルス=HPV。今回はワクチンについてです。

HPVは、タンパク質で出来た丸いボールの中に、糸状の遺伝子が入っています。
ガンを引き起こすウイルスは中身の遺伝子で、ボールだけではガンにはなりません。

HPVワクチンは中身が入ってないボールだけを体内で作り出します。
中身の入ってないボールは、ただの容器にしか過ぎず、ガンになることはありません。

作り出されたボールは人間の体内に存在しない物質なので、体内で作られたボールを体外から侵入した異物と認識し、攻撃して排除しようとします。その攻撃によってHPVに対する免疫が獲得できるのです。

HPVには200種類以上の型違いがありますが、ガンになるのは14種類、その中でガンリスクが高いのは2種類です。
それぞれボールの形状が微妙に異なります。少しでも形状が違うと免疫は認識することが出来ません。

そこで、リスクの高い2種類、4種類、9種類のボールを同時に作り出し、一気に免疫を獲得するワクチンが作られました。2価、4価、9価と呼ばれます。
市町村が公費負担で実施するワクチンの主流は4価です。
世界的な主流は9価です。日本でも流通してますが、公費負担ではなく自己負担となります。
免疫の獲得までに間隔を空けた3回の注射が必要ですが、一度獲得した免疫効果は一生涯続きます。

次回はワクチンが救う命に関してお話します。

2022/07/21

ワクチンについて

子宮頸がん 犯人はダレだ! ~その3~ HPVウイルス感染ルートは?

女性特有のガン、子宮頸(けい)がんは第4位です。乳がん、子宮体がん、卵巣がんに続きます。
子宮頸がんを引き起こす犯人は、ヒト・パピローマ・ウイルス=HPVです。

HPVは特別なウイルスではなく、男性にも女性にも体表面に存在するとてもありふれたウイルスです。
HPVには200種類以上のタイプがありますが、ガンになるのは14種類、その中でガンリスクが高いのは2種類です。

このウイルスは女性の体内にどうやって入り込むのでしょうか?
感染ルートは男性から女性です。プール、オフロ、温泉などでは感染しません。

まずウイルスは粘膜表面に取り付きます。女性粘膜についた小さな傷口から更に下の組織へと潜り込みます。
下の組織にまでたどり着いたHPVを攻撃する免疫を作るのがワクチンです。

約90%の人は免疫機能により、2年以内に自然排除されます。
約10%の人は感染が持続するものの、がんの前身である状態に移行するのは更にごくごく一部の人です。
この変化には長い時間がかかります。

がんの前身状態の治療は、外科的に切除する方法です。子宮口の頸部だけに病変がある場合は、頸部を円錐型に切除します。初期切除での生存率は約96%と大変高い数値です。

子宮は温存できるので出産は可能ですが、子宮口の組織が薄くなるので流産や早産の可能性が高くなります。
更に進行すると切除範囲が広くなります。

次回はHPVに対するワクチンの作用についてお話します。

2022/06/23

ワクチンについて

子宮頸がん 犯人はダレだ! ~その2~ ワクチンの紆余曲折

子宮(けい)がんの原因となるHヒト・パピローマ・ウイルス=HPV。
今回は日本におけるHPVワクチン接種の紆余曲折についてお話します。

HPVワクチンは、予防接種法に基づく定期接種ワクチンとして位置づけられています。
対象は小学校6年生~高校1年生の女子です。

ワクチン接種は、2013年4月に開始されましたが、わずか2ケ月後の6月に「積極的勧奨の差し控え」となりました。接種後の副反応が問題視されたのです。
その後は、希望者は接種できるものの、全員での一斉接種は行わないという状況が約8年続きます。

ただ、接種データ収集は続けられ約3万のデータが集まり、専門家による解析が行われました。
解析結果は、ワクチンが原因と考えられる重篤な副反応は、ごく少数ではあるが確実に存在する。
ただ、大多数の副反応はワクチンではなく、注射に伴う心理的な影響が大きく、ワクチンが原因とは考えにくい、という考察でした。

そして、2021年11月に厚生労働省から「積極的勧奨の差し控え」を廃止する通知が出されました。
実質的に再開されたのです。
地方自治体から対象者に個別のお知らせが始まります。

ただ、学校での集団接種ではありません。
個々に医療機関を受診して、接種を受けます。市町村が実施するため、公費負担となり自己負担はありません。

ふーん、紆余曲折があったのね。でも効果は?副作用はもっと心配だわ。

次回はHPVが引き起こす子宮頸がん、その次はワクチンのメリットデメリットについてお話します。

2022/05/19

ワクチンについて

子宮頸がん 犯人はダレだ! ~その1~ 犯人はダレだ?

突然ですが、子宮(けい)がんに罹った有名人をご存じですか?
大竹しのぶ、三原じゅん子、仁科亜季子、森昌子、ZARDの坂井泉水・・結構いますね。

日本全国では、毎年、新たに約1万人が子宮頸がんになっています。
20代から発症が急増し、ピークは30代後半から40代前半です。
悲しいことに亡くなる方は毎年約3千人、1日だと8人になります。もちろん全員女性です。

子宮頸がんの原因はハッキリしてます。
原因の95%は、ヒト・パピローマ・ウイルス=HPVというウイルス感染です。
数あるガンの中で、唯一犯人がハッキリしてるガンと言っても過言ではありません。

ってことは、ウイルス感染を防げたらガンにならないんじゃないの?
子宮頸がんって防げるってことなんじゃない?

ハイ、その通りなのです。
その有効な手段がHPVワクチンなのです。

あら、でもあのワクチンって昔に問題になったことがあるよね。

確かに。次回は日本におけるHPVワクチンの紆余曲折についてお話します。

2022/04/21

ワクチンについて

帯状疱疹はワクチンで防げるの? ~その2~

痛みが残ることもある帯状疱疹、今回は予防するワクチンについてです。

現在2種類のワクチンが販売されています。
1つ目は、毒性を弱めた生きた帯状疱疹ウイルスを注射する生ワクチンです。再感染を起こさせて免疫をつけよう、ということですね。

2つ目は、生きたウイルスは用いず、ウイルス表面にある特有のタンパク質を認識させて免疫を作り出します。サブユニットワクチンと呼ばれます。
余談ですが、コロナウイルスのワクチンもサブユニットワクチンです。表面のタンパク質を認識する免疫を作り出す、発想は全く同じなのです。科学の進化ってすごいですね。

値段はサブユニットが2回注射で5万円程、生ワクチンは1回のみ注射で5千円前後です。
予防効果はサブユニットの方が優れてます。

サブユニットワクチンを接種した人と、接種しなかった人を比較する調査がアメリカで行われました。接種した人の発症率は、接種しなかった人と比較して約半分でした。50%の予防効果があったということですね。
また、発症しても約6割の人で後遺症の神経痛や、重症度が軽く済んだという結果も出ています。

あら、イイわね。でも副作用は無いの?

あります。約8割の人に注射部位の腫れなどの局所的症状があり、約4割の人に筋肉痛やダルさ、寒気や発熱などの全身的症状がありました。

発症を防ぐのが効果であるため、発症せずに何の変化も感じません。メリットを実感しにくいワクチンなのです。ただ、発症すると1か月近く続く痛みは大変なストレスです。
それを回避できる有効な手段です。ぜひ相談してみて下さい。

2022/03/17

ワクチンについて

帯状疱疹はワクチンで防げるの? ~その1~

帯状に湿疹が出て、1か月程痛みが続く帯状疱疹。
強い痛みがある上、神経痛が後々まで残ることもあるやっかいな病気です。
元々は子供の頃に罹った水疱瘡のウイルスが原因です。

あら、感染症ならワクチンで予防ができるんじゃないの?
ハイ、実は出来るのです。帯状疱疹の予防注射についてお話します。

子供の頃に感染したウイルスは、神経の側で何十年もの間ジッと成りを潜めてます。
人間の抵抗力が低下してくる50歳を過ぎたあたりから息を吹き返し、暴れ始めます。

宮崎県で行われた調査では、50歳を過ぎると帯状疱疹の発症率が上昇し始め、発症ピークは60~70歳代でした。1000人中6人の割合で発症していました。
日本全国では、2015年は15.9万人が発症し、高齢化の進展に伴い2030年には43.8万人と3倍近くになるとの予測も出ています。

一旦暴れ始めると大変です。
神経のすぐ側で暴れるため神経が傷つき、ピリピリとした痛みから始まります。
帯状に皮疹が出て、ひどい場合は水ぶくれとなることもあります。脇や背中に出ることが多いですが、目から額にかけて出ることもあります。
余談ですが四谷会談のお岩さん、目から額にかけてブツブツがありますね。治療せずに放置された顔面帯状疱疹の典型的な後遺症なのだそうです。

さて、そんな厄介な帯状疱疹には、現在2種類のワクチンが発売されています。
健康保険は発症している病気に対する給付なので、未然に防ぐ予防は給付対象外となり、自己負担となります。
えっ、どんなワクチンなの?高いの?次回に続きます。

2022/01/20

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